SOLEIL ARTラボからの発信当院の生殖補助医療ラボから、
最新の情報を発信していきます

PICSI(Physiologic ICSI:ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)について

皆様こんにちは。
SOLEIL ARTラボの胚培養士です。
今回は、PICSI(Physiologic ICSI:ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)をご紹介します。(当院では、保険採卵は対象外となります)
通常のICSI(顕微授精)では、顕微鏡により精子の形態や運動性が良好な精子を選別しています。
しかし、これだけでは成熟精子を判別する事はできません。
DNA損傷の少ない成熟精子は、ヒアルロン酸と結合する性質をもっています。
PICSIはこの性質を利用し、ヒアルロン酸を含んだ培養液を用いて成熟精子を選別します。

詳しくはこちら▶をご覧下さい。

PICSIは、DNA損傷の少ない成熟精子を選別しICSIに用いることで、受精率・妊娠率の向上や流産率の低下が期待できると報告されています。
費用は、¥27,500(税込)となります。

ご希望の方はスタッフにご相談下さい。

 

 

 

ZyMot(ザイモート)が先進医療にて実施可能となりました

皆様こんにちは。SOLEIL ARTラボの胚培養士です。
当院は7月より膜構造を用いた生理学的精子選別術(ZyMot:ザイモート)の先進医療実施施設として承認されました。

膜構造を用いた生理学的精子選別術とは、遠心分離処理を行わず、特殊な膜構造を持つ装置を使用し、より短時間で良好な精子を回収できる方法です。
当院では、ZyMot(ザイモート)を使用しております。

採取された精液中には、運動精子以外に死滅精子や奇形精子、白血球などが含まれています。
これらを除去し、良好な精子を回収するため、当院では密度勾配遠心法(試薬に精液を乗せて遠心し死滅精子や白血球などを分離する)を実施しています。
しかし、この方法は、遠心分離によって精子に物理的損傷が起こること、精子回収に多くの工程と時間を要することにより発生した活性酸素が精子DNA断片化を引き起こす可能性が報告されています。
精子DNA断片化は、精子のDNA二重らせん構造が損傷している状態であり、胚発生の3日目以降に影響を与え、胚盤胞到達率や妊娠率の低下、流産率の上昇に関連すると考えられています。
そのため、胚発育が不良で移植に至らない方や移植できても中々妊娠に至らない方にとって、精子DNA断片化が起きていない精子を選択する事が重要になってきます。

ZyMotは短時間で遠心分離を行うことなく、精子DNA断片化を最小限におさえ、良好な精子を効率よく回収することが期待できるといわれています。
先進医療実施施設に承認されたことにより、保険適用の治療周期でも実施できるようになりました。(費用:¥27,500 税込)

但し、ZyMot実施のためには以下のような条件がございます。

<ZyMotの適応>
1回以上顕微授精を実施しても移植可能胚が得られず、または胚移植しても妊娠に至らなかった症例で、次回の採卵で顕微授精を予定する方。
※高度乏精子症、TESE/TESA/PESA/MESA、精液量が著しく少ない方、運動精子が極端に少ない方、凍結精子を使用する方、精子の質や状態が悪い場合は実施することができません。

ご希望の方はスタッフにご相談下さい。

AIを使用した胚評価システムiDAScore Version2について

皆様こんにちは。
SOLEIL ARTラボの胚培養士です。
今回は、AIを使用した胚評価システムiDAScore(アイダスコア)についてご紹介します。

当院では、患者様の胚培養をタイムラプスインキュベーター(EmbryoScope)で行っており、AIを使用した胚評価システムであるiDAScoreも導入しております。
このiDAScoreが今年の1月よりVersion2にアップデートされました。

iDAScoreは、連続観察画像を読み込ませるとAIが完全自動解析し、個々の胚のスコアを算出します。このスコアが高いほど妊娠の可能性が高いといわれています。

胚培養士による形態学的評価はどうしても主観が入るため、評価に多少のブレが生じる可能性があります。しかし、iDAScoreは膨大な量の胚データを学習させているため、一貫性をもち客観的に評価できる数値を算出することが可能です。

今回アップデートされたiDAScore Version2は、国内外18万個以上の胚のデータを学習させており、以前のVersion 1に比べ各段にデータ量が増え、性能も向上しました。そして、胚盤胞だけでなく、分割胚(2日目や3日目)に対してのスコアも評価できるようになっています。
※スコアの範囲※
分割期胚(2日目や3日目)→ 1.0-7.9
胚盤胞(5日目や6日目)→ 1.0-9.9

当院で胚の培養終了後にお渡ししている用紙には胚のグレードに加えて、iDAScore、移植順位の記載をしています。
形態学的評価が同等のものが複数個ある場合(4AAと4AAなど)、iDAScoreの数値により、評価順位(どちらの胚を優先して移植するか)を明確化することができます。

胚培養士による従来の形態学的評価も重要であり、iDAScoreと相関があるとされています。
この2つを組み合わせることで、より正確な評価を行うことができます。

SOLEIL ARTラボ 培養室長のお話

皆様、こんにちは。培養室長の山田健市です。
今回は簡単に自己紹介をいたします。
これまで、大学・大学院で体外受精を研究し、2008年より大学病院やクリニックで胚培養士として約15年間キャリアを積んできました。
生殖医療のLab(培養)分野というのは、元々は基礎(実験動物や家畜)分野から発展し、臨床(ヒト)応用され今日に至っています。
胚培養士は技術・知識の向上はもちろんのこと、常に患者様のことを想う気持ちも大切であると私は考えています。
Evidence-Based Medicine(科学的根拠に基づいた医療)と患者様お一人おひとりのNarrative-Based Medicine(物語りと対話に基づいた医療)を融合し、治療に貢献できるよう、スタッフ一同これからも努めて参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

出身地:
大阪府豊中市(1983年生まれ)

略歴:
2006年 北里大学獣医畜産学部卒業
2008年 北里大学大学院獣医畜産学研究科修了(修士)
2008年 弘前大学医学部附属病院産科婦人科(技能補佐員)
2009年 生殖補助医療胚培養士取得
2011年 医療法人翔仁会吉田レディースクリニック(現:仙台ARTクリニック)
2014年 同上(副主任)
2014年~現在 北里大学獣医学部非常勤講師
2018年 東北大学大学院農学研究科博士後期課程修了(博士)
2021年 生殖補助医療管理胚培養士取得
2022年 医療法人珀晴会仙台ソレイユ母子クリニック

資格:
生殖補助医療管理胚培養士(日本卵子学会・日本生殖医学会認定)
家畜人工授精師(ウシ・ブタ)
学芸員(養成課程修了)

所属学会等:
日本卵子学会(代議員)、日本生殖医学会、日本臨床エンブリオロジスト学会(代議員)、日本受精着床学会、日本IVF学会、日本生殖免疫学会、日本アンドロロジー学会、日本繁殖生物学会、動物生殖工学研究会、日本生殖医療システム研究会など

2024年3月現在