SOLEIL ARTラボからの発信当院の生殖補助医療ラボから、最新の情報を発信していきます

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皆様こんにちは。
SOLEIL ARTラボの胚培養士です。

先日参加させていただいた学会で取り上げられていた話題のなかで、興味深いと思われたことをいくつか紹介させていただきたいと思います。

領域を超えて今伝えたい母子に関する最新知見〜栄養研究からみえてきた葉酸/鉄の可能性〜と題するシンポジウムは、データの集積から見えてきた栄養の重要性、特に葉酸や鉄を積極的に取り入れる重要性についての講演でした。

妊娠前から葉酸を摂取することにより、胎児の神経管閉鎖障害(二分脊椎や無脳症)のリスクを減らすことが出来るのはよく知られています。しかし、母体についても葉酸が欠乏した妊婦では胎盤早期剥離のリスクが上昇するとのことでした。胎盤早期剥離は出産前に胎盤がはがれてしまうことです。胎児に酸素がいかなくなってしまうため、重篤な結果になってしまったり、母体の方も大量出血で命に関わることがあります。
葉酸が不足していると、早産・死産についてもリスク上昇が見られるとのことで、妊娠前からはもちろん、妊娠中期以降も継続的に葉酸を摂取していくことの重要性が述べられていました。

また鉄についても、産後の貧血と鬱について相関が認められるため、積極的な貧血管理が重要とのことです。
「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニン、やる気や満足感をもたらすドーパミン、という物質について、耳にされたことがあると思います。これら脳内の神経伝達物質が不足や、バランスの乱れが「何もする気が起きない」という鬱病の症状に関与していると考えられています。
鉄やビタミンはこれら脳内神経伝達物質の精製に不可欠なのです。貧血による体調不良の予防はもちろんのこと、鬱病の予防のためにも鉄分の不足には注意しなくてはならないとのことでした。

これから妊娠を目指す方にとって、体重や食事の管理は大切ですが、妊娠中、産後にもそれらは重要になってきます。長い目で女性の体調を考える上でも、葉酸やビタミンについて積極的に取り入れるよう、意識することが重要だと感じました。

また、受精卵着床前検査(PGT-A)についてのシンポジウムもありました。
PGT-Aとは、体外受精によって得られた受精卵の染色体を、移植する前に事前に調べる検査のことをいいます。以前は特定の遺伝子疾患を持つ方だけが対象でしたが、2022年にPGTに関する見解・細則が改定され、一般臨床における医療行為として実施されることになりました。
PGT-Aは海外ではすでに広く実施されていますが、日本におけるデータはこの3年で蓄積されてきたことになります。ここまで集積されてきた国内のデータ、または海外のデータとの比較などに基づき得られた知見について講演されていました。
女性の年齢が上がるにつれ、染色体異常の受精卵の割合は上昇します。PGT-Aの実施件数は年々増えてきており、これは当院でも同様です。

今後の患者様への情報提供のためにも、常に新しい情報を得られるようアンテナを張っておきたいと思います。